表面の大切さ

友人の不動産屋さんから、相談があった。事務所近くの空き物件を購入したので、活用方法を考えてほしいとのこと。こうゆう相談は初めてである。

 

これまでは、使い手が直接相談してくるケースがほとんだった。だから、使いたいイメージのある使う本人から話が聞けるので、設計しやすい。今回、不動産屋さんが使うわけではないので、何をよりどころにして設計していいのか分からない難しさがある。

 

建物内外の表面の印象を良くして、中の細かい使い方は、借り手が見つかってから計画するというのも、一つのやり方である。飲食店の場合、給水給湯排水管が重要になるので、床は後から対応できるようにしておく必要がありそうだ。、

 

空家活用は自治体でもテーマになっている。防犯防災の観点から語られることが多く、負の遺産とかお荷物といったネガティブなイメージがほとんどだ。古く汚れているので、普通の方が魅力や可能性を見つけるのが難しのも当然である。

 

私たちには、中身が大切と思いたい気持ちがどこかにある。一方、表面は、表面的という言葉の響きからわかるように、軽んじられる傾向がある。しかし、私たちが経験することは、どこまで行っても表面であることも、また事実である。本人が問題にする中身というのも、本人が確認できる中身の表面のことであったりする。

 

そう考えると、表面は私たちの経験や記憶の大部分を占めていることが分かる。そして、建物の表面の印象を良くする手法はいくつかある。

 

今回の外観に関しては、建具だけ新しくするだけでも、大分印象が変わる。そこだけ新しく、すっきりさせることで、古い壁の見え方が変わってくるはずだ。言葉で表現すると、レトロな感じである。

 

その場合、中の壁は新しい材料に取り換えたほうがよい。外から入った時のギャップが生まれ、印象に強く残る。そのほうが、外の壁の古さがますます気にならなくなる効果もある。

 

今ある天井は、撤去したほうがよい。天井を高く広々とさせたほうがよい。鉄骨トラスで屋根ができているようなので、それを見せ、中のアクセントにしたほうがよい。照明と組み合わせると、光と影の複雑な効果が生まれる。

 

そのようなことを、現地を見ながら考えた。

事務所に戻り、もう少し検討しようと思う。