団地リフォームの経験を通して、団地の天井は、住み手の個性を表現できる手軽な場所ではないかと思うようになりました。
団地は、コンパクトなお部屋の組み合わせでできている。
棚、箪笥、キャビネット、チェスト、ソファーなどの家具は、どれも壁を背にして配置する。
更に、絵画、カレンダー、想い出の写真、時計、神棚といったモノも、壁に取付られる。
そのため、生活し始めると、それらで壁が意外と隠れてしまう。
また、外壁には、採光通風のための窓があり、内壁には、出入りのための建具がある。
だから、団地の壁は、大きく整形の取れる壁が少なく、欠き込みや穴のあいた壁がほとんどだ。
そのため、全ての壁にお金を掛け、お部屋に個性与えようとしても、期待していたほど効果が得られない。
そう考えた上で、団地の天井を見上げてみると、そこには、手つかずの広いキャンバスが広がっているのが分かる。
それに気が付き、S様のリフォームでは、各お部屋の天井にそれぞれ異なる特徴を与えることを提案した。
四畳半と六畳のお部屋は、S様のお子さんのアイデアで、黄色とオレンジ色の塗料で天井を塗る計画とした。
それも、S様のご家族の手によってである。
台所は、照明器具はあるものの、ダイニングテーブルの配置を考えると、その器具の位置がズレていることが分かった。
そこで、特徴的な形状の天井を一部作り、そこにライティングレールを設置した。
すると、ペンダント照明が、ダイニングテーブルの位置に合わせて、自由に取付けられる。
更に、居間は、正方形のシーリング照明を45度に振って取り付けた。
すると、台所の特徴的な部分天井と、デザインが一体的になり、台所とリビングが一つの大きな部屋のように感じられる。
各お部屋に足を運んでみると、それぞれ違った個性があり、それがそれぞれ独立しながら、一つのお部屋になってる点が面白い。
その中でも、台所・居間が、各お部屋の中心であることを感じさせる特徴的なデザインになっている。
住んでいて、毎日が楽しくなるのではないか。
団地の天井を、もっと自由に!
また、新しい天井デザインを提案してみたい。