難しいことは、ステップに分けてみる

10月13日が一級建築士本試験の設計製図試験だった。

 

設計製図試験は、学科試験に合格した令和4年以来の二回目である。製図試験コムという設計製図試験に特化した資格試験学習塾に参加した。勉強だけ行った昨年に続き、二年目である。主催している先生は、関西国際空港を設計したイタリア人建築家レゾ・ピアノの事務所で働いた経験のあるY先生である。

 

Y先生は「ステップ・エスキース」という設計製図の本を何冊も出版しており、その中の一冊を読んだことがきっかけで、私は塾に参加した。読んで字のごとく、エスキースという設計の検討作業を細かくステップに分けて考えるという方法である。色々な要素で構成されている建物全体を、一度に考え、一気に作り上げることは難しい。そのため、ステップに分け、細かく要素を一つ一つ取出し、チェックして、選択肢を用意し、評価・判断し、選らんでいくという流れが、どうしても必要になる。

 

昨年は、その各ステップで考えることの解像度の具合が掴めず、あまり良い成果が得られなかった。今年は、準備を整え、覚悟を持って本試験に臨むことが出来た。作図中、何度か間違いに気づき、慌ててしまう瞬間があったが、冷静さを取り戻し体勢を整え、完成図面を提出することが出来た。その時点で、自己ベストである。私はがんばった。

 

初受験時は、何も出来ずに白紙を提出した。周りはどんどん作図し、びっしりと線が引かれた図面を描いている中、何も出来ず、時間だけが過ぎて行った。その時間だけを体験し、何も出来ない今の自分を受け止めるしかなかった。今年は、それとは全く違う。私が時間を追っている展開だった。最後まで諦めず、学んだやり方を使い、図面を完成させた。頭と腕を極限状態でフル回転することなど、人生で経験することはない。人間やればできるものであると思った。

 

自宅に戻り、冷静になって再現図を作ると、いくつものミスを発見する。今回一番のミスは、東側道路の延焼ラインの描き忘れである。建物に掛かっていないので開口部の防火設備の記号「○防」は不要だが、全て記入しろという指示があるにもかかわらず、記入しなかった。法規ミスは一発不合格である。それ以外にも、什器・機器の記入忘れ等がいくつかあり、減点がいくつもありそうだ。

 

残念であるが、これが今の自分の実力である。一級建築士の携わる建物は大きく、ミスが許されない。クライアント、工事業者や社会への損失が大きい。そう考えると、中途半端な能力の今の自分にライセンスを与えてしまうと私自身が勘違いしてしまう。それは危険である。あと二年と1回の受験チャンスがある。訓練機会を与えてくれることが有り難い。