三郷団地S改修は、単にお部屋を綺麗にする事以外の目的があった。それは、小学生のG君に家族や学校以外での社会経験と職業体験をさせる目的である。引きこもりがちなG君に、新しい刺激を与え、体を使って物事に取り組み、達成感を味わってもらおうという意図である。その機会としてセルフビルド工事が適しているというお母様S様の判断がありました。
セルフビルド工事というからには、厳密に言うと、住み手自らの手で、その工事を完成させることである。しかし、それは、現実的ではないので、打合せを通して、お客様の期待をくみ取り、お客様に合ったセルフビルド工事を提供している。お勧めしている以上、「楽しかった」「面白かった」と思っていただきたい。絶対避けたいのは、「やらなければ良かった」と思われることである。そのための工夫や配慮をこちらで十分行っている。
三郷団地S改修では、指先で塗装する技法を試みた。ビニール手袋をして、指先で二層目に細かい痕をつけるのである。道具を使いこなす必要がなく、体の感覚を頼りにする点がポイントで、どちらかというと体育に近い。
まず、塗装しない箇所を養生するために、マスキングテープとマスカを貼る。次に、ローラーや刷毛を使い、一層目の塗装を行う。次に、ビニール手袋をした指に少しペンキをつけ、指全体に馴染ませ、軽くタッチする感じで、ポンポン指の痕をつける。それを何度も塗り重ねて行く。すると、抽象的な柄になるのだ。指先ポンポン塗装と名付けた。
普通、二層塗って完成にする。それは、塗装の技術が必要だ。習得に時間がかかるし、失敗ややってはいけないことが発生する。だから、緊張して慎重になり、雰囲気が悪くなる。一番の理由は、色が単調で面白みに欠けることである。べたーっとした色面が出来るだけで、深味や豊かさがない。
一方、この指先ポンポン塗装は、良い意味で適当なのである。そもそも失敗がない。失敗と思っても、リカバリー出来るし、しばらく経ってから見ると、その部分がアクセントに見えてくるのである。小さなお子さんも参加でき、皆で一斉に行え、どこから始めても良い。皆夢中になり、ワイワイ賑やかに作業が出来る。良いことだらけなのである。
三郷団地O改修でも、採用した。お友達からの評判が良いと、満足されていた。