三郷団地O改修の大工工事の仕上がりは非常に良かった。それは、工事に参加した大工Hさんの技術による。Hさんは、和室の造作工事も行う若い大工さんだった。
今まで一緒に仕事をした大工さんも、一般的には良い大工さんであった。多くのパーツと細かい寸法設定があるのが、私の設計の特徴だ。それを読み、意図を理解し、立体化するために、作る順番を考え、実際工事を行えるのは、優秀な証拠である。
Hさんは、仕上げ木材の扱い方、寸法精度の捉え方、材料の固定方法、そのようなことに、他の大工さん以上に気を使う大工さんだった。
壁に杉の羽目板を固定する際も、正面からビス固定せず、接着剤でしっかり固定されるように、目地を利用し、ベニヤの端材で仮押さえしていた。仕上げ材を正面からビス固定してしまうことに、心理的な抵抗があるようなのだ。
また、四畳半の格子状の壁の作り方も、非常に高度な技術を使っていた。まず、ビバホームで購入した杉の流通材を、全て綺麗にカンナ掛けしてくれた。更に、部材の固定もビスが見えないような細工、加工方法と組み立て方をしてくれた。お陰で、格子壁の部分だけ、お寺のような風格が出ていた。
お陰で、全くストレスを感じず、気持ちの良い仕上がりになった。これは、小さな写真では分からない。私も今まで味わたことのない経験だった。
デザインの方向性は設計で決まる。デザインのポイントは図面に示される。しかし、最終的な仕上がり具合は、職人の技術によるのだ。