既成概念を疑ってみると、新しく見たことのない結果が得られたりする。
建物は、仕上げと構造体の大きく二つで構成されている。構造体を作ってから、それとは別の仕上げ材を施す。そのような順番で一般的な建物は作られている。当然、仕上げ材の方が丁寧に扱われる。構造体は隠れてしまうので、見た目より、安全性が守れていることを第一に考える。
しかし、そのやり方だと、工程と材料が増えてしまう。そこで、構造体を仕上げ材として使えないだろうか、という発想が生まれる。大工さんには、釘の位置と間隔をきちんと揃えるようにお願いする。すると、釘は露出しているが、小さな点なので、それ程気にならなくなる。構造用合板とはいえ、木を薄く削りだしたモノを重ね合わせているので、複雑な木目模様がある。経年変化で赤みを帯びてきたりする魅力もある。
その発想でラーチ合板という構造用合板をそのまま仕上げ材として使った事例を数多く手掛けた。戸塚のスタジオもその一つである。クライアントも、「木のぬくもりを感じられる温かなスタジオになった」と喜んでくれた。