素材は、出来るだけ自然素材を中心に、素材としての質感がしっかりあるものを選んでいます。もちろん、あらゆる箇所を自然素材としてみたい気持ちはありますが、コスト、施工性と性能効果を考慮し、目的に合ったバランスの良い組み合わせを重視しています。
これまで振り返ってみた中で、自然素材の意匠性と性能効果を重視していたのは、坂戸の展示スペースである。壁は漆喰塗、床は厚み30mmの杉フローリング、窓枠は杉材、壁と天井にはセルロースファイバーの断熱材を充填、という仕様だった。セルロースファイバーは、私が提案した。ここで展示する作品の思想、展示室としての防音性、作品の保管に適した調湿性能、さらに、凹凸のある鉄骨造に断熱材を充填させる施工性、その4点から私が提案した。お客様もそのことを理解してくれ、採用を承諾してくれた。セルロースファイバーは、漆喰との相性が良く、壁の調湿性能を高めてくれる。
ここ最近のリフォームでは、予算を考慮し、自然素材と比較的素材感のある材料を上手く組み合わせて使うことが多い。三郷団地O改修では、無垢の杉板を部屋の中心的な部分に使いつつ、それ以外は、木を使っていると言っても、ラワン合板、ラワン・ランバーコア材、タモの集成材、等であったりする。それに汚れ防止とつや出し用に、自然塗料を塗って仕上げている。それでも、お客様は、「団地の部屋らしからぬ、木のぬくもりのあるお部屋になった」と十分喜んでくれた。
自然素材は本当に気持ちが良い。見た目の印象だけでなく、空気の質を変える。そのため、三郷団地O改修のような化粧直しとしてでなく、坂戸の展示スペースのような性能改善も伴う工事内容の場合の方が、自然素材にする費用対効果が高い。そのように考えているので、自然素材しか使わないという姿勢ではなく、お客様の好みや目的に応じて、バランスの良い素材選びを心掛けています。